平成117月11日

大阪府高等学校情報教育研究会

高等学校新教科「情報」の認定講習に関する提案

 

はじめに

 今年3月に,高等学校における新しい学習指導要領が発表され,そのなかで新しく教科「情報」が設けられることになった。さらに先頃,高等学校新教科指導者研究協議会の概要が発表された。

 これを受けて各方面から,高等学校における新教科「情報」を担当する教員に対する,いわゆる“認定講習”の内容に関わる提案がなされているが,“認定講習”の内容に関しては,各専門の学会・教育機関・研究会の御意見を参考にするとして,本研究会では,現役の教員が新教科「情報」の免許を取得するにあたって考慮願うべき事柄に対して,提案を行うものである。

 

本研究会の概要

 大阪府高等学校情報教育研究会は,昨年12月に設立準備総会を開き,本年5月正式に発足した,新教科「情報」に関する調査研究・研修・情報交換を中心に活動を行う研究会であり,大阪府下の国立・公立・私立の高等学校・養護教育諸学校160余校,620余名の会員を有する団体である。(資料…1)

 当然,現在はまだ教科「情報」の免許を有する教員は無く,会員の構成は数学約40%,理科約20%,英語・社会・国語各約10%,その他の教科約10%という割合である。

 現在,本研究会は教科「情報」の2003年度からの実施に向け,その教材研究を進めるとともに,実施にあたっての教材開発や研修,さらには,小・中学校との連携をはかるべく,情報収集・交換を行っているところである。

 

認定講習対象者についての提案

 全国高等学校長協会の総会において,認定講習の対象者として,一部教科の免許所持者に対しては,いわゆる“単位の読み替え”等で有利になるが,文系教科の免許所持者に対してはその配慮が難しいとの話がなされたと聞くが,この教科は既存の教科と比較すると明らかなように,特定の学問領域について学ぶものとして設定されていない。

 この点,新学習指導要領にも明確に“情報及び情報技術を学ぶことを通して,社会の情報化に対応できる能力と態度を育てること”と示されているように,ある特定の教科の免許所持者が特に優先されるべきものではないと考える。

 さらに,現在の教員の多くは、現在のような高度情報通信技術(以下ITと略す)が一般的になる前に大学を卒業しており,現在のITの状況についての認識が不足している。

 その状況でたとえば数学・理科の教員のみが担当するとなると,従来の情報処理教育(プログラミングを中心とした授業)ばかりに重点が置かれることが懸念される。

 とくに,情報Cにおいては公民の考え方や人権教育の観点からのアプローチが必要であり,現在,社会のいたるところで,ITを利用しなければならない状況をると,多方面からの視点が必要となると考える。そのため教科「情報」では、様々な教科を教えている教員が違った視点から取り組んでいくのが有効ではないかと考える。

 さらに,実習を相当時間含む教科の性格上,複数の教員で担当した方が学習の効果が確実となり、また、その方が教員間の相互交流や技術内容・評価方法の検討や引き継ぎなどによい結果が現れるように思う。

 また,本研究会会員の構成から考えて,特定教科の免許所持者に限った認定講習が実施された場合,本府では明らかに教科「情報」の指導者数が不足する事が考えられる。

認定講習受講者に対する配慮に関する提案

 以上のようなことから,本研究会は認定講習の対象者として,一部特定教科の免許所持者だけでなく,以下のような条件を満足する教員に関しても,一定の配慮がなされるべきものであると考える。

認定講習の日程・方法に対する配慮に関する提案

 本研究会の会員の多くは,教科「情報」の免許取得に関して積極的である。(資料…2)

 一方,それらに積極的に取り組もうとする教員の多くは現在学校現場でも,分掌・部活動その他各方面でも積極的であると考えられる。

 そのため,認定講習の日程・方法についてはそういった現場の状況を十分把握し,受講者本人に対する負担を配慮するとともに,学校全体に対する負担を十分配慮されることが望ましい。講習期間として長期休業中や夜間等の勤務時間外の活用が有効と考えられるが,この間も,会議等や部活動に対する配慮がなされることを希望する。

 さらには,放送大学・インターネット等を活用してのWeb上での通信教育等、一定の条件(レポートの提出など)の後に資格認定試験を行なう等,情報機器を最大限に活用した方策がなされることを期待するものである。

 また,現在のように情報に関する状況が日進月歩で変化する状況下において、短期一定期間ですべての研修を行い,免許を与えることよりも,教科「情報」を教える教員にとっては,継続的・定期的な研修が欠かせないのではないかと考えられる。

 したがって,授業の出来る範囲を限定した免許を考える(たとえば専門教科「情報」から切り離して,普通科における情報ABCのみを対象とする)ことや,大学で新たに「情報」免許状を取得してきた教員を一定の人数確保できるまでの期間限定の免許といった考え方もできるのではないかと考えられる。

おわりに

 新教科「情報」を教えるということは,既存の教科にはない難しさがまだまだ数多く存在する。

 今回,認定講習が実施されるにあたり,その内容に関することにはふれず,現職教員がさらにもう一教科の免許を取得するにあたって,高等学校現場からみてあるべき姿,望ましい姿を提案したが,「情報」教育に関して数多くの熱心で前向きな教員が,一人でも多く免許を取得し,新教科「情報」の指導に当たられることを望むものである。

以上